本日の1冊: 戦略は直観に従う ―イノベーションの偉人に学ぶ発想の法則

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戦略は直観に従う ―イノベーションの偉人に学ぶ発想の法則
戦略は直観に従う ―イノベーションの偉人に学ぶ発想の法則ウィリアム ダガン William Duggan

東洋経済新報社 2010-09-29
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Planned Happenstance Theory を知るまで、盲目的にキャリア目標を設定することに懐疑的だった。本書はその組織版とも言え、目標ありきの組織運営に疑問を持っていた身としては、本書に光明を見た。

様々な戦略家を紹介するが、特に重要となるのがナポレオンの戦史を研究した、「戦争論」の著者クラウゼヴィッツと「戦争概論」の著者で実際にナポレオン軍の副官であったジェミニである。前者は「クーデュイ(coup d'oeil)」というひらめき、戦局眼といった概念で、「歴史の先例」「平常心」「ひらめき」「意志の力」の4段階で、異なる状況下の断片的な情報から決断する本質、即ち戦略的直感を説く。これに対しジェミニの戦略的計画は「自分の立ち位置(A地点)」「目標(B地点)」「A地点からB地点へ到達するための計画」の3段階で戦略を練ることであり、現代社会の企業その他組織運営の糧となっている。

「戦争論」の難解さも影響した模様で、ジェミニによってもたらされた「戦略」「戦術」「ロジスティクス」といった単語が一般化し、ジェミニ方式が現代で主流となっている。しかし、不確定要素を考慮していない目標ありきは、時に立ち回らなくなる。事実、”ナポレオンも直感的な行動こそが、戦争に勝利するために必要なのだ。”と述べていたという。(P.87)

著者のクラスで質問するという、以下の質問にあなたはどちらを選ぶだろうか。

A 自分を信じ、明確な目標を設定し、懸命に努力すれば、どんなことでも成し遂げることが可能だ。
B 機会に備え、機会を見極め、機会に基づいて行動すれば、多くの事柄を成し遂げることが可能だ。

Aを選択する人が、特にアメリカで多いという(日本でも、Aの方が過半数になると推察する)。これはアメリカンドリームを夢見て、成功者の偉業に身を重ねて「なせばなる」的な発想だが、数多の失敗者や、環境など外的な成功要因に目を向けなくなる弊害がある。

本書の中に紹介された学生の言葉そのものだが、まさに、いままで(言葉も知らなかった)ジェミニ式アプローチに代わる方式があるとも知らず、言われるがまま目標設定をしてきたことか。目標を設定し、努力した結果、目標を変更することとなれば挫折感を味わうか、あるいは無神経にならざるを得ないにも関わらず。

マイクロソフト、Apple、Google、ルイス・ガースナーなどイノベーションを実現したケーススタディも多数用意されており、読み物としても面白い。

以下、備忘録。
・ギリシャ語の「Planets[惑星]」は元来「放浪者」を意味する。(P.19)
・海馬とはギリシャ語で「タツノオトシゴ」を意味する。(P.47)

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