2011年6月 Archives

戦略は直観に従う ―イノベーションの偉人に学ぶ発想の法則
戦略は直観に従う ―イノベーションの偉人に学ぶ発想の法則ウィリアム ダガン William Duggan

東洋経済新報社 2010-09-29
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Planned Happenstance Theory を知るまで、盲目的にキャリア目標を設定することに懐疑的だった。本書はその組織版とも言え、目標ありきの組織運営に疑問を持っていた身としては、本書に光明を見た。

様々な戦略家を紹介するが、特に重要となるのがナポレオンの戦史を研究した、「戦争論」の著者クラウゼヴィッツと「戦争概論」の著者で実際にナポレオン軍の副官であったジェミニである。前者は「クーデュイ(coup d'oeil)」というひらめき、戦局眼といった概念で、「歴史の先例」「平常心」「ひらめき」「意志の力」の4段階で、異なる状況下の断片的な情報から決断する本質、即ち戦略的直感を説く。これに対しジェミニの戦略的計画は「自分の立ち位置(A地点)」「目標(B地点)」「A地点からB地点へ到達するための計画」の3段階で戦略を練ることであり、現代社会の企業その他組織運営の糧となっている。

「戦争論」の難解さも影響した模様で、ジェミニによってもたらされた「戦略」「戦術」「ロジスティクス」といった単語が一般化し、ジェミニ方式が現代で主流となっている。しかし、不確定要素を考慮していない目標ありきは、時に立ち回らなくなる。事実、”ナポレオンも直感的な行動こそが、戦争に勝利するために必要なのだ。”と述べていたという。(P.87)

著者のクラスで質問するという、以下の質問にあなたはどちらを選ぶだろうか。

A 自分を信じ、明確な目標を設定し、懸命に努力すれば、どんなことでも成し遂げることが可能だ。
B 機会に備え、機会を見極め、機会に基づいて行動すれば、多くの事柄を成し遂げることが可能だ。

Aを選択する人が、特にアメリカで多いという(日本でも、Aの方が過半数になると推察する)。これはアメリカンドリームを夢見て、成功者の偉業に身を重ねて「なせばなる」的な発想だが、数多の失敗者や、環境など外的な成功要因に目を向けなくなる弊害がある。

本書の中に紹介された学生の言葉そのものだが、まさに、いままで(言葉も知らなかった)ジェミニ式アプローチに代わる方式があるとも知らず、言われるがまま目標設定をしてきたことか。目標を設定し、努力した結果、目標を変更することとなれば挫折感を味わうか、あるいは無神経にならざるを得ないにも関わらず。

マイクロソフト、Apple、Google、ルイス・ガースナーなどイノベーションを実現したケーススタディも多数用意されており、読み物としても面白い。

以下、備忘録。
・ギリシャ語の「Planets[惑星]」は元来「放浪者」を意味する。(P.19)
・海馬とはギリシャ語で「タツノオトシゴ」を意味する。(P.47)
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そもそもの出発点、エネルギー保存の法則から始まり、各種発電方式の仕組み、グローバルな政治・業界状況、メリット・デメリットと、国際的な趨勢と、俯瞰的に理解できる。見開き2ページで解説と図表が半々の面積を占め、さらっと読める。

原発問題の是非と盲目的な再生エネルギーへの転換主張が世を埋め尽くしている今だからこそ、読んでおきたい1冊。

以下、備忘録。
(P.165)
デジュール標準:「デジュール」はフランス語で「法にあった」の意味。ISO、IECなど。
フォーラム標準:「フォーラム」はもともと「公共的な広場」の意味、DVDなど。
デファクト標準:「デファクト」はフランス語で「事実上の」の意味。Windows、VHSなど。
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”適性に欠けた能力は学習や訓練では向上しない”、”子どもの成長に親は必要ない”など、一般に信じられた努力を真っ向から否定する衝撃的な内容で始まる。如何に悲観的な内容で埋め尽くされているのか、と思いそうだが、いざ読んでみるとドラえもんを始めとした身近(?)な事例や参考文献の引用から入り、分かりやすい論理で書かれ、読む者を惹きつける。
最終的には、著者の考える、目指すべき方向性も提示しており(タイトルに”○○の方法”と謳っているので当然と言えば当然だが)、後味もすっきりする。

個々のトピックス1つ1つが参考になるが、中でも納得したのが、”日本人は会社が大嫌いだった”(P.221~)
だ。バブル末期の日本が頂点だった時代でさえ、日本人はアメリカ人よりも仕事に満足していないという調査結果で、日本の高い自殺率の理由を、社員という共同体(コミュニティ)に結論づけて説く。

努力したからと行って誰もがイチローになれるわけではないのと同様、万人に特効薬とはなり得ずには精神論や宗教的な雰囲気も見受けられる自己啓発本。努力や能力開発を全否定することが正しいと思わないが、その対局の考えとして、本書は読んでおいて損はない。

以下、備忘録。
社会学者ロバート・B・チャルディーニの「影響力の武器」による承諾誘導---心理的な要因を利用してYESと答えさせる技術 (P.169~)
アイデアを形にして伝える技術 (講談社現代新書)
アイデアを形にして伝える技術 (講談社現代新書)原尻 淳一

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アイデアを伝える・・・というタイトルだが、中身はデータを収集などインプットから実際にまとめ、プレゼンなどアウトプットするまでを包括。”いかに継続してアイデアを出せる仕組みを作るか”という発想が斬新で、参考になる。

インプットとしてはインタビューなどフィールドワークを主としつつ、Web検索のノウハウやDBとしての蓄積を紹介。日本ではまだまだ馴染みの低いTED、iTunesUも出ている。アウトプットの段階になると、提案書やレポートの「型」、マンダラートを利用したアイデアの構造化、そしてプレゼンのノウハウまで掲載。また、文章の日々の訓練ではBlogでの書評記載などをあげていて、とにかく提案やレポート、タイトルの通りアイデア出しを苦とせずに行える仕組みが分かりやすい。

データを集める段階では、とある人のカード・データベースに感銘を受け、Evernoteなど最新のWeb Serviceも取り入れた著者が提唱する方法は、まさに梅棹忠夫氏「知的生産の技術」の現代版とも言えそう。

以下、参考になった点、備忘録がてら記載。
文献を探せる「想 IMAGINE Book Search http://imagine.bookmap.info/index.jsp
連想検索に使える「Webcat Plus http://webcatplus.nii.ac.jp/
人口負荷社会(日経プレミアシリーズ)
人口負荷社会(日経プレミアシリーズ)小峰 隆夫

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人口が減少し始めた日本、著者の言葉を借りると人口オーナスではどうなるのか、どうあるべきか考えさせられる1冊。労働力が純粋に減っていくとともに年金始め、様々な課題があるのは事実だが、人口減少は単純に悲観的な状況ではないと気付かされる。特に、様々なアイデアは考えさせられるものが多い。
例えばただでさえ高齢者の方が若年者よりも投票率が高く、今後ますます高齢化されると将来への先送りがされやすくなると言う課題がある。これに対し、選挙の仕組みを地域でなく「年齢別選挙区」の導入、アメリカの人口学者デーメニが1986年に提案した、子供が選挙権を得る年齢になるまで親が子供の投票権を行使できる案など、いろいろ挙げている。(P.155)

なかなか、こうしたアイデアあれど変わらないのは民主主義の弊害というのも悲しい。
※Amazonで取り扱い無し

昭和の少年時代、合気道に音楽と言った趣味、ちょっとした日常・・・著者の様々な体験をおもしろおかしく、ある時には自虐的に、またある時は啓蒙的に記載された、エッセイの集約本。時折織り交ぜられた人生の教訓を参考にしながら、おもしろおかしく楽しめる。
なぜマネジメントが壁に突き当たるのか―成長するマネジャー12の心得
なぜマネジメントが壁に突き当たるのか―成長するマネジャー12の心得田坂 広志

東洋経済新報社 2002-04
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マネジメントの分野に関する書は数多だが、大抵はどう周り(部下)をコントロールするかという視点が多い。本書の中心はあくまでも自分であり、1人のプレーヤーとして能力を高めることを諭す。暗黙知を習得し、それを如何に伝達するか、禅の世界を紹介しながら、講義形式で紹介する。ドラッカーのマネジメント同様、セルフ・マネジメントという視点もあり、本書の対象は必ずしも管理職のみではない。

中でも興味深いのは、体系だった知識の正反対、暗黙知の重要性や、禅の世界とともに直感の正しさ、説いている。そうした直感だが、思い当たりではなく、ある分野を突き詰めた人が悟る世界ということで納得すると共に、本など形式知の限界に納得。

何か行き詰まった際、新たなポジションについたとき、視点を高めて自分自身の立ち位置や行動を見つめ直すきっかけになる。
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Twitterの神々 新聞・テレビの時代は終わった (現代ビジネスブック)田原 総一朗

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最近Twitterに最近はまったという田原総一朗氏が、ITで著名な下記6名との対談をそれぞれ章立てて掲載。
・三木谷浩史氏
・佐々木俊尚氏
・津田大介氏
・上杉隆氏
・堀江貴文氏
・夏野剛氏
旧態メディアの衰退が抱える闇の部分、問題とネットのこれからに期待する内容が非常にわかりやすく、面白い。これからのメディアの行く先、Twitterの威力、ネットを利用する人もしない人も、いま何が起こっているか、理解の一助になる。