2010年11月 Archives

カラフル (文春文庫)
カラフル (文春文庫)森 絵都

文藝春秋 2007-09-04
売り上げランキング : 1339


Amazonで詳しく見る
by G-Tools

”とある魂が輪廻のサイクルに戻るため、下界の自殺を試みた体を借りて生活しながら、自らの犯した罪探しをする。”

ストーリーは至極シンプル、テンポ良く読み通せる。読み終えてはっと気付かされるのは、自分自身を主観的にみるか客観的に見られるかでどう人間が変わるかということ。その問題・悩みは客観的に見つめられているか、大局で物後をを見ているか。何かうまく立ち回らないことがあるとき、ちょっと息抜きにおすすめの1冊。
坂の上の雲〈7〉 (文春文庫)
坂の上の雲〈7〉 (文春文庫)司馬 遼太郎

文藝春秋 1999-02
売り上げランキング : 1301


Amazonで詳しく見る
by G-Tools

第七巻では、奉天会戦での辛勝、バルチック艦隊の日本到着までを収録。

奉天会戦では、かろうじてロシア側のミスが日本のそれよりも上回るなどから勝利(と呼べるか微妙だが)となるが、その中でも以下の記述は、大規模組織におけるリーダーシップの拙い対応として、印象深い。

ロシア軍はいたずらに弄命につかれ、さらには軍団のなかの小単位をあちこちひきぬいては予備隊にしたり、救援軍にしたりしたために建制秩序がくずれ、団隊長みずから自分はたれの命令をあおぐべきかどうかということがわからないほどに指揮系統が寸断されたり混乱したりして、組織が大いに弱体化した。(P.114)

その他、最初にバルチック艦隊を発見した日本人として紹介される宮古島の漁師達の逸話も興味深い。かれらは発見した事実を、漁で一仕事終えた後にもかかわらず、電信所がある石垣島まで15時間舟を漕ぎ、上陸地点から八重山郵便局まで30km走り、本島へ
「敵艦見ゆ」(P347)
と発信する。結果、哨戒艦信濃丸の後となり第一報とならなかったが、名もない人々の命がけな行動、さらにその後ずっと誰にも語らず日の目を見なかった点に、当時の日本人の必死な一面を垣間見る気がする。
青春の証明 (角川文庫)
青春の証明 (角川文庫)森村 誠一

角川書店 2004-08
売り上げランキング : 492970


Amazonで詳しく見る
by G-Tools

霧の中、公園でデート中のカップルが、暴漢に襲われた。二人を助けようとした警察官は、逆にナイフで刺殺されてしまう。そして、助かった二人もなぜか現場から逃げ去ってしまった。数日後、男は女から別れを告げられた。「卑怯者!」という言葉を残して。男は自身の「罪」を償うために刑事に転職する。

「証明」シリーズの1冊。
現代(といっても70年代だが)と第2次大戦を舞台に、他の証明シリーズ同様に様々な人物のドラマが交錯していき、最後に1点へ交わる時、タイトルの意味を考えさせられる。人物も舞台も違うが、「人間の証明」ほどの感銘は受けなかったが、それでも他にはない独特の展開に引き込まれる。
坂の上の雲〈6〉 (文春文庫)
坂の上の雲〈6〉 (文春文庫)司馬 遼太郎

文藝春秋 1999-02
売り上げランキング : 2898


Amazonで詳しく見る
by G-Tools

第六巻では、黒溝台、欧州での諜報、旅順を落とした乃木群の北進、そしてバルチック艦隊と日本海軍の状況を収録。資金も兵も枯渇しつつある日本、潤沢の軍力を持ちながら不穏な空気が立ちこめ革命前夜の模様を呈するロシア。全編、日本・ロシア通して様々な人物が登場するが、欧州で諜報活動を行う明石が興味深い。氏についての記述

-----あの明石に、それができたのか。
と、みなくびをひねり、明石のどこがそれをさせたのだろう、とふしぎがった。
結局は、かれの行動者としての資質にあるとしかおもえない。かれは目標をさだめると構想をたて、それにむかって思案と行動を偏執的に集中させるという性格をもっていたが、それがかれを成功させたにちがいなく、(P.202)

が思案するよりも行動することの重要性をよく示す。

その他、「ウラジオストック」の意味は感銘を受ける。

極東のウラジオストック(Vladivostok)という町の名は東を征服せよという意味であることを知ったが、運命のしだいではロシア帝国の東(vostok)が東京になるかもしれないということをおもった。(P.171)

4時間半熟睡法遠藤 拓郎

フォレスト出版 2009-06-19
売り上げランキング : 2486


Amazonで詳しく見る
by G-Tools

多忙なビジネスパーソンなどへ、睡眠をどこまで削れるかというテーマを睡眠医療認定医が分かりやすく説く。

タイトルの4時間半という数字はあくまでも健康を損なわず、かつ平日のみと言う前提の基、最低の睡眠時間とされている。まずその根拠を示し、次にその睡眠時間で十分とするため如何に睡眠の質を挙げるか、methodology、グッズ紹介と続く。内容はシンプルながら、実効性があり、非常に記憶に残りやすい。

以下、読後メモ。

・ストレスによって引き起こされる症状が「自律神経失調症」。ストレスに強い人間は「セロトニン」「ノルアドレナリン」というホルモンが多い。「SSRI」「SNRI」はそれらホルモンを増長する。アメリカではよく飲まれている。(P.75)

・眠りには体温を下げ、手足で熱を発散する。i.e. 眠る前から、手足が温かくなる。
 手足に流れる血流量を増やすことが、快眠には欠かせない。グリシンというアミノ酸は手足の血流量を増やす。グリシンは最終的にはコラーゲンとなり、副作用は一切ない。サプリメントとして市販されている。(P.136)
自立が苦手な人へ―福沢諭吉と夏目漱石に学ぶ (講談社現代新書)
自立が苦手な人へ―福沢諭吉と夏目漱石に学ぶ (講談社現代新書)長山 靖生

講談社 2010-06-17
売り上げランキング : 106120


Amazonで詳しく見る
by G-Tools

仕事の能力もない結婚もできない・・・の方に目が行ってしまうが、中身は至ってまじめそのものである。福沢諭吉と夏目漱石は名前を借りているだけと思いきや、「学問のススメ」や「坊ちゃん」「心」などの経緯や裏事情、エッセンスから両者の個の立て方(=自立)の考え方、そこから我々が学ぶべきを示している。

また、個々の自立と共に競争の原理から弱者と強者の関係は必然的に生じるが、そうした弱者・強者と Community 内での個々の自立といった、一見矛盾する関係についても提言される。

社会・他人、環境・・・非難囂々するは安し、だが人を呪わば穴二つで、自ら思考をする大切さ、そのための学びの必要性を痛感させられる。

以下、読後メモ。

「自ら考える」という労力をリストラしてしまうと、次は自分自身がリストラされることになる。というか、思考のリストラは自分で自分そのものをリストラしていることに他ならない。「我思う、故に我あり」が近代の出発だとすれば、思索のないところに、その人はいないのである。(P.150)

福沢によれば、<独立の気力なき者は必ず人に依頼す、人に依頼する者は必ず人を恐る、人を恐るる者は必ず人に諂う(へつらう)ものなり。常に人を恐れ人に諂う者は次第にこれに慣れ、その面の皮鉄の如くなりて、恥ずべきを恥じず、論ずべきを論ぜず、人をさえ見ればただ腰を屈するのみ>(以下、略) (P.191~)
坂の上の雲〈5〉 (文春文庫)
坂の上の雲〈5〉 (文春文庫)司馬 遼太郎

文藝春秋 1999-02
売り上げランキング : 1761

おすすめ平均 star
star二百三高地
star司馬ファンからの叱責覚悟で反証
star組織内部の《陰謀》が、組織を破滅させる。

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

第五巻では、二〇三高地攻略、バルチック艦隊の回航、黒溝台の情勢を収録。日本の旅順要塞攻略方法、ロシアのバルチック艦隊では、戦略のまずさ・指揮官の欠点から、当時の日本・ロシアの国民性や国自体のシステムの長所・短所まで丹念に分析されている。

毎回の感想だが、物語としてのおもしろさはもちろんとし、歴史の中から独裁の欠点、寿命を迎えた国(システム)の脆弱性、普遍的な戦略の必要性・会得について考えさせられる。

特に、以下については「兵理」「戦史」「兵書」を様々な分野の類に読み替えられることに気付かされる。

真之は、兵理について、
「兵理というものはみずから会得すべきもので、筆舌をもって先人や先輩から教わるものではない」
(略)
あらゆる戦史を読んで研究せよ、読める限りの兵書を読むべきである、その上でみずから原理を抽出せよ、兵理というものは個々の研究して個々が会得するしか仕方がないものだ、といった。
(P.189)
裸でも生きる2 Keep Walking私は歩き続ける (講談社BIZ)
裸でも生きる2 Keep Walking私は歩き続ける (講談社BIZ)山口 絵理子

講談社 2009-10-01
売り上げランキング : 5686

おすすめ平均 star
star自伝的なのろけ本?
star私と重ねて
star自分がどれだけ甘ったれか教えてくれた本。

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

大きく分けて、「マザーハウス」を立ち上げた話と、バングラデシュに続き2カ国目であるネパールでの奮闘記で構成される。相変わらず一般の思考からすると猪突猛進のような生き方なのだが、読んでいると仏教の三毒・煩悩でないが、迷っているだけで何もしないことの愚かさを思い知らされる。今回は著者も迷いが(実際にはあるのだが)吹っ切れ、マザーハウスの経営理念というか、もっと大枠で哲学というものができあがっている。また、文章も素人っぽさが薄れていて、読んでいてすがすがしい。

これを読めば、きっとマザーハウスのバッグに興味を持ってしまうだろう(但し、実際のバッグの購入者は小田急などデパートでは一見さんが半数らしい)。

c.f.「本日の1冊: 裸でも生きる――25歳女性起業家の号泣戦記 (講談社BIZ)」