2010年4月 Archives

拝金社会主義 中国 (ちくま新書)
拝金社会主義 中国 (ちくま新書)
筑摩書房 2010-02-10
売り上げランキング : 126601

おすすめ平均 star
star拝金社会主義中国
star拝金主義の向こうにあるものは何でしょうか?
star今の中国が良くわかる必読の力作

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日経ビジネスオンラインの連載コラム「中国“A女”の悲劇」 http://business.nikkeibp.co.jp/article/world/20080212/147023/ で中国の現代人(特に、都市部)の悩みを記載していた著者が、中国の現状としてまとめ上げた1冊。

ソビエト連邦が崩壊して危機感を抱いた政府が、社会主義を堅持するために(政治問題から目をそらさせるために)”金儲け”を認めた結果、社会主義の理想が崩壊したという皮肉。また、その結果大きな格差を生んで国が分断した現状。それでも尚、急成長して間違いなく21世紀の主導を握る国。それら善し悪し全て含めた中国の今を把握できる。

客観的記述の中に、幼少期を中国で過ごした実体験や種々の取材を織り交ぜてあり、それらがより生々しく感じられる。
20歳のときに知っておきたかったこと スタンフォード大学集中講義
20歳のときに知っておきたかったこと スタンフォード大学集中講義Tina Seelig

阪急コミュニケーションズ 2010-03-10
売り上げランキング : 7

おすすめ平均 star
starワクワクさせてくれる本、実践しなきゃ。
starのっけから驚かされ、考えさせられる
star自ら作ってしまっていた限界を可視化させてくれる

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起業家向けの講義を担当している著者だから、内容もそちらの方面が多い。それでも"月並みな考え方を覆す”、”日常にぶつかる困難をチャンスとして捉えられるようになる”点は大いに参考となる。20歳と言わず、人生の羅針盤に、活力剤に、とらえ方は人それぞれ異なるだろうが、読む人全てに何かしら役立ち心に残るフレーズがここにはある。例えば

自分のキャリアは、フロントガラスではなくバックミラーで見ると辻褄が合っている。(P.131)

と言った内容が、多数の有名・無名人の人生とともに紹介される。また、その中にはスタンフォード大学卒業式でのスティーブ・ジョブズの講演も多数含まれる。後半では実際に使われた演習もいくつか紹介されており、そうした講演・演習のビデオのURLが巻末に多数、掲載されている。

■読後メモ

BATNA(Best Alternative to a Negotiated Agreement):交渉が決裂した時の対処策として最も良い案を検討・準備しておくことで、①余裕ができる、②最悪な条件を取る必要がない、③BATNA自体が交渉策になる、といったメリットが生まれる。

主婦パート 最大の非正規雇用 (集英社新書 528B)
主婦パート 最大の非正規雇用 (集英社新書 528B)
集英社 2010-01-15
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おすすめ平均 star
starパートも職場の中堅に、そして大黒柱ではないが家計を支える柱の一つ
star仕事は正社員並み、待遇は正社員の半分
star主婦パート再考

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フリーターや派遣とはまた違った立場、かつ最大の非正規雇用とされる主婦パートにスポットを当てた希有な一冊。だんだん基幹業務をパート職員が担うようになりながら正規社員とは処遇に格差がある中、夫の収入も昔のように当てにはならず、社会的には夫の属性物・責任ないという目が残り、家庭でもストレスを受けやすい、という著者の言葉を借りれば蟻地獄のような状況を示す。

全体としてはストレスの末として児童虐待や殺人という拍子ない展開など少し論理が偏っていると感じるが、年収103/130万円の壁のように主婦パートというのが社会制度上の都合で作られているのも事実。専業主婦・パート・キャリアといった、本来ライフスタイルの違いだけであるはずのものが身分の違いのように各種差別や偏見をどう解消していくか、本書では2009年に誕生した民主党政権に期待する記載もあるが、さて。

こうした問題は一方をたてれば片方がたたずのように、全体最適化の観点から検討する必要があるのでは、というのが素直な感想。そうは言っても、冒頭述べたとおり新しい観点での問題提起であることには変わりない。

読んで愉しい 旅客機の旅 (光文社新書)
読んで愉しい 旅客機の旅 (光文社新書)
光文社 2003-08-13
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おすすめ平均 star
star飛行機での旅行が楽しくなるために
star写真がもっと欲しいが、大変興味深い本
star今までに2回しか乗ったことがないのですが…

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20世紀初期から現在まで、様々な航空会社を、今昔東西の旅客輸送を”旅客”の目線でまとめている。初期のスチュワーデス(初期は看護婦の資格から身長・体重、年齢、未婚限定等厳しい条件があった)から機内食、今はなき喫煙にエンターテイメント、飛行機の迷彩まで、タイトルのごとく豆知識として参考になる。国内線の映画上映や機内食の廃止・有料化、2010年4月からは全日空が国内線の無料飲料を水とお茶だけにしたり、9.11/SARSを発端に航空会社の経営・コスト削減が厳しくなるにつれ、本書で謳っているような愉しみがだんだん過去の物となっていくのは少し寂しい。

著者はかなりマニアックな一面もあるようで、各種コレクションの話など、興味ない分野の記述は著者と読者に温度差が生じる。また、そうしたグッズを言葉だけで熱く語られてもイメージがわかないので、写真をもっとふんだんにあると良かった。

ルポ 貧困大国アメリカ (岩波新書)
ルポ 貧困大国アメリカ (岩波新書)
岩波書店 2008-01
売り上げランキング : 273

おすすめ平均 star
starルポ 貧困大国アメリカ(岩波新書)
star新自由主義は絶望を呼ぶのか
star読書後の後味の悪さ(笑)

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内容は困層の肥満、民営化・自由化による国内難民(人災だったカトリーナ)、医療(一度の病気で貧困そうに転落する人々)、ワーキングプア・余裕のない若者が支える戦争

で構成。特に、最後のイラク戦争に関する内情には恐怖を覚える。高校・大学(それも、主に低所得の家庭)に親の年収を始めとした個人情報を軍に提出させる、米陸軍が開発(440万ドルの開発費、その後もVersion Up等で150万ドル/年)したAmerica's Armyという無料のオンラインゲームを公開して個人情報を取得する、などして集めた情報からピンポイントのリクルートを行う。また、州兵として戦争に参加した日本人、戦争のOutsourcingとして民間化されることで諸外国からも人が集められている---思想も何もなく、戦争へ参加している----実情も紹介。

そこには、日本が見た理想のアメリカはもう存在しない。