本日の1冊: 傷はぜったい消毒するな 生態系としての皮膚の科学 (光文社新書)

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傷はぜったい消毒するな 生態系としての皮膚の科学 (光文社新書)
傷はぜったい消毒するな 生態系としての皮膚の科学 (光文社新書)
光文社 2009-06-17
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おすすめ平均 star
starタイトルそのままズバリで内容にうなった
star自らの権威を守るために新療法を拒否する医師は恐ろしい
star医学界全体の問題についても言及されている

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傷を消毒して乾燥する治療を真っ向から否定する本書。ここでの正しい傷口治療は
①出血を止める
②ハイドロコイド(商品名:キズパワーパッド)、プラスモイスト(http://www.allergy-biz.com/ などで購入可能)、白色ワセリン(商品名:白色ワセリン、プロペト、Vasellin)、あるいは食品ラップで覆って乾燥を防ぐとともに、1日数回、汗や滲出液(ジュクジュク)を洗うだけというもの。消毒液は外敵を攻撃する皮膚常在菌までも殺してしまい軟膏(クリーム)は含まれる界面活性剤が傷ついている細胞を破壊するため逆効果といている。それらの内容については治療結果や、自らの体実験結果で示している(http://www.wound-treatment.jp/)。ではなぜ、誤った治療が未だ医療現場で横行するのか。権威の話、思考停止等々でるのだが、話は中盤からは「99・9%は仮説 思いこみで判断しないための考え方」と同様にガリレオの天動説・地動説問題同様、時代時代に誤った定説があること、それが正される経緯をパラダイムシフトとして説明。
後半は皮膚と体内が異なる治癒能力・過程があることを、生物の進化の過程から説く。間等、陸に上がった生き物は体内(血液)から治す仕組みが出来上がったのに対し、皮膚(表皮)は傷つきのシグナルで回復する。後者のシグナルとはドーパミン、即ち脳は皮膚から作られたという仮説まで登場する。
序盤は、消毒など既存の考え方がいかに間違っているか、延々と説かれるのかと思っていたが、中盤以降は前述の通り科学や歴史、生物の進化から意外な仮説検証まで、最後まで一気に引き込まれる内容だった。実用書としてはもちろん、物語としても非常に面白い1冊。
c.f.
以下、読後メモ
・昔、外科は床屋の仕事だったため、赤(動脈)・青(静脈)・白(包帯)のサインポールが使われる(P.142)。
・ゼンメルワイスとリスター(P.88)
・パラダイムはトーマス・クーン(1922~1996)が定義(P.149)
・生まれたばかりの新生児を母親が抱く、授乳するのは母親の皮膚常在菌を分け与えて定着してもらう意義がある(P.220)。

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